2012年12月3日月曜日

山頭火を訪ねて5人旅

         ・・・清水水娥

 山頭火を訪ねる旅に参加しました。旅のメンバーは北田先生、昭代さん、操子さん、由紀さん、水娥の5名で、11月26日から28日の2泊3日。小郡、防府、山口の周遊コースです。
 昨年の5月の顕信、放哉を訪ねて岡山、小豆島を廻って以来の俳句三昧の旅でした。北田先生との旅は現地で縁の方々とお会いし、本やパンフレットにない生のお話を伺えることと、先生の名ガイドが何よりの魅力。実際にその地を歩き、触り、食し、呼吸することで、遠い存在の憧れの人がすぐ傍らで一緒に歩いているような身近な気持ちになれる……この俳句の旅がわたしは好きです。
 今回の旅でも、初日は地元の地域誌「防府日報」社長で「山頭火新聞」編集長の窪田耕二氏、「山頭火ふるさと会し理事の田中睦子さんの歓迎を受けました。おふたりの案内で郷土料理の店「さくら」では、山頭火の句にある〝ちしゃもみ″を特別に作っていただいたり、優しい響きの防府の訛りを楽しく耳にしました。
 ・雨ふるふるさとははだしであるく
 この句碑の前では、皆ではだしになって歩き、足裏の感触を確かめたり、また、其中庵の壁にあった黒い僧衣を着てみたりと、少しふざけ合いながらも山頭火のこころに触れたのです。
 湯田温泉の夜は、先生のメル友・白坂和子さんが宿を訪問されて共に会食。ゆかた姿のわたしたちとその晩の宿の女将の大サービスで、すっかりうちとけてなごやかに楽しい時を過ごしました。
 そうこうしながらも、席上の即吟、句碑を訪ねながらの吟行。歩さながら一句、立ち止まって一句、バスを待ちながら一句、襖上の人となって一句……というように次々と句が浮かんでくるうれしさ。旅という非日常的な時空間と、仲間の存在が五感をくすくるのでしょうか。
 しばらくは俳句モードの世界に浸っていたい気持ちです。

   〈小郡にて〉
  其中庵の茶の花に導かれる
  庵の裏山の紅葉が舞う
  句碑の傍の措き寄せられた紅葉

   〈防府の夜〉
  ちしゃもみの膳の話が弾む
  連鰈語る人の少し防府のなまり
  離れの客の背中笑っている
  皆んなほろ酔いで句誌創刊の話
  表通りは萩往還へ続く

   〈11/27防府〉
  路地を曲って山頭火のふるさとの句
  はだしになってみる句碑の前
  小径をたどって句碑に出会う
  句の札読み読み小径を往く
  道案内は山頭火の句札

   〈防府天満宮〉
  北風の熱い天神餅をほおばる
  水面のもみじ風に流れる
  もみじの茶室の一服をいただく
  茶室のたたみにも紅葉ひこひら
  もみじの輪を吐いて鯉の泳く

   〈種田酒造跡〉
  酒樽倒れたまま朽ちている
  タガだけが空に弧を描く
  折り重なって酒瓶割れている
  煙突も朽ちて天を刺す
  この家後にして出家したのか
  ワンカップの山頭火が並んでいる

   〈11/28湯田温泉〉
  朝のひとり山頭火の湯にひたる
  朝の足場の人々の師走の話
  排水口からも湯気の白い
  小郡駅の真申庵せんべいを探す
  五人の旅に訪れた山口の人のやさしい

   〈羽田空港〉
  旅の終りのコーヒーとカレーパン

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